フランスの離婚手続き、何故、時間がかかるの?

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Q&A フランスの離婚手続き、何故、時間がかかるの?

皆さん、そう想像されていませんか? 

実は、そのようなケースが多いのが実情で、何故なら、フランスの離婚手続きで、決めなければいけない、細かい離婚条件があるからです。以下、ご説明したいと思います。協議離婚(divorce par consentement mutuel)でも、裁判離婚(divorce contentieux)でも、決めなければいけない事項は同じです。

1。財産分与

まず、財産分与があるかないについては、どの夫婦財産制度が適用されるかチェックする必要があります。大まかに分けて、3タイプの形態があります。

⑴夫婦共有財産制(la communauté réduite aux acquêts)

共有財産とされるのは原則として結婚後形成された財産で、相続や贈与によって得た財産は除かれる。結婚後形成された財産、不動産、貯金、株、車、高額の家具などは、原則、夫婦それぞれ50/50とされます。

共同財産は、結婚契約(contrat de mariage)を結婚時に公証人の元で締結していない夫婦に適応されます。結婚契約を締結した場合は、、別財産制(la séparation de biens)、または、夫婦包括財産制(la communauté universelle)が適応されます。 

⑵ la séparation de biens (夫婦別財産制) 

結婚後、収入などで形成した財産は、それぞれの財産となり、共同名義で不動産を購入していれば、不動産所持率は購入時に決めた割合の不動産所持となります。

⑶ la communauté universelle(包括財産制)

夫婦で結婚前後、関係なく、夫婦共同財産に入る財産を決める制度です。

フランス以外の国で婚姻し、その後1年以上その国に住んだ場合で、結婚契約を結んでいない場合は、その国の夫婦財産制が、適用されるか(基準は婚姻後直後に一番長く住んだ国)、婚姻後、10年以上フランスに定住した場合は、フランス法(つまり共同財産制)が適応されるようになりますが、複雑なので、詳しくは専門家に問い合わせる必要があります。

手続き上、協議離婚の場合は、和解で財産分与を離婚成立をする前に、行う必要があり、裁判離婚の場合は、離婚成立後、財産分与を和解か、裁判で行うことになります。

 の場合は、財産の清算作業を、公証人のところで行うか、和解で清算が難しい場合は、裁判での清算を行わなければいけないが、裁判となると、離婚成立してから、さらに2、3年の時間がかかります。

2。一時補償金(Prestation compensatoire

この概念は、日本法にはなく、日本語に訳すと、『一時補償金』となりますが、簡単に説明すると、この金額は、慰謝料でもなく、離婚後の生活保護を約束するものでもなく、離婚前の生活レベルを保つためでもなく、財産分与でもなく、新たな生活を再スタートするための費用と考えるのが妥当だと思います。

金額の設定のために、考慮に入る要素は、

  • 離婚時の収入の差と、将来的にわかる範囲での双方の収入
  • 学歴、職種、職務経験
  • 結婚期間のうちの同居年数
  • それぞれの離婚後の財産状況(不動産、貯金、相続)
  • 特に女性が、出産、子育ての為、または夫の転勤に着いていき、自分のキャリアを犠牲にした場合の、代償
  • 定年に近い方は、年金の見込み金額

以上の要素が大きくなるほど(例えば、結婚年数が多くなるほど、または、収入の差が多くなるほど)、補償金の金額が多くなるが、法律で決められている計算式はないため、金額を算出するのは、再スタートのための費用をケースバイケースで考えます。

金額の支払いは、基本的に離婚時に一括で支払うが、無理な場合は最大8年間の分割払いも可能です。

3。離婚後の姓

結婚時に、結婚相手の姓に変更された方については、相手の許可があれば、使用し続ける権利が与えられます。

日本では複合姓(ダブルネーム)は基本認められていませんが、国際結婚の場合は、『家庭裁判所』の許可を得て『役所』へ提出することで、戸籍の苗字を複合姓にできます。 

離婚の場合、離婚日から3ヶ月経過してしまった場合や、日本の裁判所の許可を得て複合姓になさっている方は、裁判所を通して旧姓に戻る手続きが必要になってきます。

補足になりますが、日日の夫婦で離婚されると、お子様は法律上、父親の戸籍に載ります。母親の籍、姓に変更された場合は、除籍届けに父親が署名をしてくれれば、変更は可能となります。

4。共同親権の国、フランス

欧米では、離婚後の共同親権は、『親の権利』と定義され、フランスでは人権問題に位置し、それぞれの親が子供に対して『平等の権利』を有すという考えが定着しています。

親権共同とは、子供が成人になるまで、お子さんの成長に関わる大切な選択事、つまり、学校の進路、医療の選択、宗教の選択などは、親が話し合って決める権利のことです。

また、お子さんの習い事、いろいろな問題については、親は連絡を取り合う義務があるというのが、フランス流共同親権の定義ですが、実際は、親同士の話し合いが難しい場合だと、この義務が達成できないケースも実際は多いように感じます。

5。監護権(droit de garde)と、面会権 (droit de visite et d’hébergement)

日本では、『親権』の定義の中に、子供と生活する権利、つまり『監護権』が含まれています。

フランスでは、『親権』と『監護権』は分けられていて、監護権はお子さんと生活をする権利のみとなります。監護権の形態は3タイプあります。

  • Garde classique : 週の大半は、片親の方に住み、週末に一回など、もう片方の親に会う。
  • Garde alternée : 一般的に週単位で、子供がそれぞれの親の家を行き来する。
  • Garde réduite : 主に、仕事、地理的な問題から、年に数回、バカンスの間、離れている親の方と子供が面会する。

それぞれの住んでいる場所、子供の年齢、子供の意見、親の経済状況などを考慮に入れいて、『子供の利益』となる監護形態を決めます。 そして、監護権を持たない片親へ、面会権が与えられます。

6。養育費について

養育費は日本と同じく、監護権がない親の支払い義務です。

金額にあたっては、両者の親の収入状況、お子さんにかかる実費を合わせて考慮に入れ、算出します。また、フランス政府から出ている養育費参考グラフ(以下)も参考となります。

https://www.justice.fr/simulateurs/pensions-alimentaire/bareme

日本では、『養育費を払ってもらっていない。』と嘆くシングルマザーの話を多く聞きます。フランスでは、債務者が経済的に可能であれば、まずこのような状況は回避できます。

何故かというと、差し押さえと言って、債務者の銀行口座から、滞納金の差し押さえを、執行吏Huissier de Justice)に依頼すれば、フランスの銀行口座で、貯金があれば、差し押さえは十分可能です。

最後に、フランスの離婚は時間がかかり、過去のことをぶり返して思い出して、辛い思いをし、細かいことまで決める必要があり面倒である反面、ある程度の勝ち取れる権利があるメリットもありますので、弁護士としっかり打ち合わせて、人生の再スタートを踏んでいただきたいと思います。

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