
在仏日本人会、「相続」についてのセミナー 2023年5月12日(オンライン)
財産と夫婦財産法について(共同財産制か、別財産制、どちらが適応されるか)
被相続人の財産を定めるために、既婚者であれば、まず夫婦財産制(régime matrimonial) をチェックする必要がある。
離婚 2
Q&A フランスの離婚手続き、何故、時間がかかるの?
皆さん、そう想像されていませんか?
実は、そのようなケースが多いのが実情で、何故なら、フランスの離婚手続きで、決めなければいけない、細かい離婚条件があるからです。以下、ご説明したいと思います。協議離婚(divorce par consentement mutuel)でも、裁判離婚(divorce contentieux)でも、決めなければいけない事項は同じです。
1。財産分与
まず、財産分与があるかないについては、どの夫婦財産制度が適用されるかチェックする必要があります。大まかに分けて、3タイプの形態があります。
⑴夫婦共有財産制(la communauté réduite aux acquêts)
共有財産とされるのは原則として結婚後形成された財産で、相続や贈与によって得た財産は除かれる。結婚後形成された財産、不動産、貯金、株、車、高額の家具などは、原則、夫婦それぞれ50/50とされます。
共同財産は、結婚契約(contrat de mariage)を結婚時に公証人の元で締結していない夫婦に適応されます。結婚契約を締結した場合は、、別財産制(la séparation de biens)、または、夫婦包括財産制(la communauté universelle)が適応されます。
⑵ la séparation de biens (夫婦別財産制)
結婚後、収入などで形成した財産は、それぞれの財産となり、共同名義で不動産を購入していれば、不動産所持率は購入時に決めた割合の不動産所持となります。
⑶ la communauté universelle(包括財産制)
夫婦で結婚前後、関係なく、夫婦共同財産に入る財産を決める制度です。
フランス以外の国で婚姻し、その後1年以上その国に住んだ場合で、結婚契約を結んでいない場合は、その国の夫婦財産制が、適用されるか(基準は婚姻後直後に一番長く住んだ国)、婚姻後、10年以上フランスに定住した場合は、フランス法(つまり共同財産制)が適応されるようになりますが、複雑なので、詳しくは専門家に問い合わせる必要があります。
手続き上、協議離婚の場合は、和解で財産分与を離婚成立をする前に、行う必要があり、裁判離婚の場合は、離婚成立後、財産分与を和解か、裁判で行うことになります。
⑴ ⑵の場合は、財産の清算作業を、公証人のところで行うか、和解で清算が難しい場合は、裁判での清算を行わなければいけないが、裁判となると、離婚成立してから、さらに2、3年の時間がかかります。
2。一時補償金(Prestation compensatoire)
この概念は、日本法にはなく、日本語に訳すと、『一時補償金』となりますが、簡単に説明すると、この金額は、慰謝料でもなく、離婚後の生活保護を約束するものでもなく、離婚前の生活レベルを保つためでもなく、財産分与でもなく、新たな生活を再スタートするための費用と考えるのが妥当だと思います。
金額の設定のために、考慮に入る要素は、
以上の要素が大きくなるほど(例えば、結婚年数が多くなるほど、または、収入の差が多くなるほど)、補償金の金額が多くなるが、法律で決められている計算式はないため、金額を算出するのは、再スタートのための費用をケースバイケースで考えます。
金額の支払いは、基本的に離婚時に一括で支払うが、無理な場合は最大8年間の分割払いも可能です。
3。離婚後の姓
結婚時に、結婚相手の姓に変更された方については、相手の許可があれば、使用し続ける権利が与えられます。
日本では複合姓(ダブルネーム)は基本認められていませんが、国際結婚の場合は、『家庭裁判所』の許可を得て『役所』へ提出することで、戸籍の苗字を複合姓にできます。
離婚の場合、離婚日から3ヶ月経過してしまった場合や、日本の裁判所の許可を得て複合姓になさっている方は、裁判所を通して旧姓に戻る手続きが必要になってきます。
補足になりますが、日日の夫婦で離婚されると、お子様は法律上、父親の戸籍に載ります。母親の籍、姓に変更された場合は、除籍届けに父親が署名をしてくれれば、変更は可能となります。
4。共同親権の国、フランス
欧米では、離婚後の共同親権は、『親の権利』と定義され、フランスでは人権問題に位置し、それぞれの親が子供に対して『平等の権利』を有すという考えが定着しています。
親権共同とは、子供が成人になるまで、お子さんの成長に関わる大切な選択事、つまり、学校の進路、医療の選択、宗教の選択などは、親が話し合って決める権利のことです。
また、お子さんの習い事、いろいろな問題については、親は連絡を取り合う義務があるというのが、フランス流共同親権の定義ですが、実際は、親同士の話し合いが難しい場合だと、この義務が達成できないケースも実際は多いように感じます。
5。監護権(droit de garde)と、面会権 (droit de visite et d’hébergement)
日本では、『親権』の定義の中に、子供と生活する権利、つまり『監護権』が含まれています。
フランスでは、『親権』と『監護権』は分けられていて、監護権はお子さんと生活をする権利のみとなります。監護権の形態は3タイプあります。
それぞれの住んでいる場所、子供の年齢、子供の意見、親の経済状況などを考慮に入れいて、『子供の利益』となる監護形態を決めます。 そして、監護権を持たない片親へ、面会権が与えられます。
6。養育費について
養育費は日本と同じく、監護権がない親の支払い義務です。
金額にあたっては、両者の親の収入状況、お子さんにかかる実費を合わせて考慮に入れ、算出します。また、フランス政府から出ている養育費参考グラフ(以下)も参考となります。
https://www.justice.fr/simulateurs/pensions-alimentaire/bareme
日本では、『養育費を払ってもらっていない。』と嘆くシングルマザーの話を多く聞きます。フランスでは、債務者が経済的に可能であれば、まずこのような状況は回避できます。
何故かというと、差し押さえと言って、債務者の銀行口座から、滞納金の差し押さえを、執行吏(Huissier de Justice)に依頼すれば、フランスの銀行口座で、貯金があれば、差し押さえは十分可能です。
最後に、フランスの離婚は時間がかかり、過去のことをぶり返して思い出して、辛い思いをし、細かいことまで決める必要があり面倒である反面、ある程度の勝ちを取れる権利があるメリットもありますので、弁護士としっかり打ち合わせて、人生の再スタートを踏んでいただきたいと思います。
財産と夫婦財産法について(共同財産制か、別財産制、どちらが適応されるか)
被相続人の財産を定めるために、既婚者であれば、まず夫婦財産制(régime matrimonial) をチェックする必要がある。
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